受験界通説(※)によれば、「特許発明の技術的範囲」という言葉は70条に規定されているが、「発明の技術的範囲」なる言葉は条文上規定されていないから誤りであると言われている。
従って、添削実務(※2)においては、「発明の技術的範囲」なる言葉を書かないよう指導している。俺も確か一度そのような指導を受けた記憶がある。
※ 予備校説ともいう。予備校の答練上、尊重される説である。当然のことながら、本試験では考慮されない。
※2 答練の添削実務。当然のことながら、本試験とは何ら関係がない。
さて、上記が妥当かどうか疑問に思ったため、アースベルト事件判決文を読んでみた。
昭和61(オ)30 模造品製造差止等請求事件
昭和63年07月19日 最高裁判所第三小法廷 判決 その他 仙台高等裁判所
■判示内容
実用新案登録出願人が出願公開後に第三者に対して実用新案登録出願に係る考案
の内容を記載した書面を提示して警告をするなどして、第三者が右出願公開がされ
た実用新案登録出願に係る考案の内容を知つた後に、補正によつて登録請求の範囲
が補正された場合において、その補正が元の登録請求の範囲を拡張、変更するもの
であつて、第三者の実施している物品が、補正前の登録請求の範囲の記載によれば
考案の技術的範囲に属しなかつたのに、補正後の登録請求の範囲の記載によれば
考
案の技術的範囲に属することとなつたときは、出願人が第三者に対して実用新案法
一三条の三に基づく補償金支払請求をするためには、右補正後に改めて出願人が第
三者に対して同条所定の警告をするなどして、第三者が補正後の登録請求の範囲の
内容を知ることを要するが、その補正が、願書に最初に添附した明細書又は図面に
記載した事項の範囲内において補正前の登録請求の範囲を減縮するものであつて、
第三者の実施している物品が補正の前後を通じて考案の技術的範囲に属するときは、
右補正の後に再度の警告等により第三者が補正後の登録請求の範囲の内容を知るこ
とを要しないと解するのが相当である。第三者に対して突然の補償金請求という不
意打ちを与えることを防止するために右警告ないし悪意を要件とした同条の立法趣
旨に照らせば、前者の場合のみ、改めて警告ないし悪意を要求すれば足りるのであ
つて、後者の場合には改めて警告ないし悪意を要求しなくても、第三者に対して不
意打ちを与えることにはならないからである。
■結論
発明の技術的範囲とは、普通に使用する言葉のようである。
■その他リンク
弁理士試験ストリート