平成19年論文 意匠法第2問(2-2) 珍解答等を読み返していて思ったのだが、「~を実施できるか」という問いに対して、「侵害が云々」といい始めるのは的外れではないか、と思う。
平成19年論文試験意匠法の設問(2-2)は以下のような問題である。
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(2-2)その後、乙の意匠イに係る意匠権の存続期間が満了し、丙の意匠ロに係る意匠権が存続しているとき、丁が、丙の当該意匠権との関係において、意匠二に係る自転車を業として製造販売することができるかについてその理由を付して述べよ。
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※本日記は一受験生に過ぎないcof01のつぶやきである。出典が全くない日記なので、内容の正当性は無きに等しいことは言うまでもない。
予備校回答案
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1.意匠権の侵害とは、権原無き第三者が業として登録意匠またはそれに類似する意匠を実施することを言う(23条)。
2.本問では、意匠二と登録意匠ロは類似しているから、二に係る自転車の製造販売は、ロに類似する意匠の業としての実施に該当する(2条3項)。従って、丙は侵害を否認できない。
3. そこで、丙の抗弁事由について検討すると、(以下略
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こんな感じになるだろう。
俺は思う。侵害関係ないじゃん、と。
問題は、「丙は、自転車の業としての製造販売を
法律上できるか」ということを聞いているのである。製造販売行為が侵害となるか否かを聞いているのではない。
もっと言うと、意匠権の侵害というのは、(1)意匠権という排他的独占権が成立している状況で、(2)実施権原を有しない者が、(3)その意匠の業としての実施をする、時に成立する。
問題は、上記(2)を聞いているのである。実施をしているかどうかなどは聞いていない。
また、「侵害となるから実施できない」というのは、逆なのである。「(法律上)実施できない(のに実施をしている)から、侵害となる」のであって、「侵害となるから実施できない」わけではない。(実施権原がないことは、権利侵害の消極的要件である)
「意匠権の侵害となれば、強大な権利である差止請求によって、実施を差し止められる。だから実施できないのだ」、という論理もあろう。しかし、それも差止請求権によって、
法律上実施を差し止められるに過ぎないのである。
上記は、「法律上の実施権原がなくとも、差止さえ受けなければ事実上の実施を継続できる」ということを言っているわけである。それを言うならば、差止請求が認められた後でも、適当にごまかして事実上の実施を継続すればよい話であろう。すなわち、差止請求を受けようがなんだろうが、法律を無視すれば実施はできるのである。
論文試験では、そんな事実上のことは聞いていない。
法律上実施できんのかどうか、それを聞いているのである。
意匠権が成立していれば、その消極的効力によって、他人の実施が制限されるのであるから、なんら権原なき者は、
法律上、実施ができないのである。
換言すれば、問題は権原の有無を聞いているのである。
にもかかわらず、侵害がどうこうといい始めるのは、関係がない話をし始めていることになるわけである。
また、否認がどうこう、抗弁がどうこうというのもいただけない。(そもそも侵害がどうこうという時点でいただけないが)
否認や抗弁は、訴訟上の用語である。本問では訴訟は提起されていない。従って、否認がどうこう、抗弁がどうこうというのは的外れなのである。
こういう場合には、ストレートに、
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1.丙の意匠権の消極的効力により、第三者の登録意匠ロまたはそれに類似する意匠の行としての実施は制限される(23条)。従って、丁がなんら権原を有しない場合には、丁は、登録意匠ロに類似する二に係る自動車の製造販売を行うことができない(2条3項、23条)。
2.丁の通常実施権が登録されていた場合には、~だから、丁は、~の範囲内で通常実施権を有する。従って、この場合、丁は、(法律上)二に係る自転車の製造販売ができる(28条2項、2条3項)。
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と答えるべきである。
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