平成20年論文特許法・実用新案法を解いてみた。
感想:むずい。21年とか22年よりもかなり難しいように思える。
一問目はネタを知っていた(勉強始めて間もないころに論点やら回答やらを見た)けど、答案構成に30分近くかかり、書ききるのに65分くらいかかった。
二問目は、答練等で何度かやった問題と似た問題であるので、54分で(合計1分程度のこして)書ききった。
論点はある程度かけたようである。あとは記載内容と字の汚さが課題というところだろうか。
再整理のため、以下に答案を記載する。
【問題1】
設問(1)(イ)
1.変更出願が適法である場合
出願の変更をする場合、元の出願の願書等の範囲内で認められる考案の範囲内で出願書類を作成しなければ、出願時の遡及効を得られない(10条3項)。
本問で、Xの出願時の願書等の記載から、当業者がYの出願に係る考案を導き出せる場合には、Yの出願時は、書類等の提出時期を除き、Xの出願があった時とされる(同項)。
この場合、新規性の喪失例外の適用が可能かどうかが問題となる(11条1項で準用する特許法30条3項)。
実用新案法で新規性喪失の例外の適用については、自ら日本国内の博覧会に出品した場合には、政府等が開催する博覧会、もしくは政府等以外が開催する博覧会で特許庁の指定があるときに限り、認められる(同項)。
従って、甲が出品した博覧会が政府等以外が開設する博覧会で、特許庁長官の指定がない場合には、新規性喪失の例外適用が認められない。この場合、乙は、博覧会出品時にHに係る考案が公知になったとして、3条1項1号違反の無効理由を主張することができる(37条1項2号)。
2.変更出願が違法である場合
本問では、意匠出願の願書等の記載から、実用新案登録出願に係る出願書類を作成している。従って、Xに係る出願書類からYに係る考案を認定できないときは、Yの出願時は遡及しない(10条3項)。
この場合、乙によるa1の販売により、新規な形状Hと同一の形状が知られる恐れがあるから、a1に係る考案は公然実施をされた考案に該当する。
従って、乙は、3条1項2号(ないし同項1号)違反を理由とした無効理由(37条1項2号)を主張できる。
設問(1)(ロ)
実用新案に係る出願書類は、実施可能要件(5条4項)、若しくは明細書サポート要件(同条6項1号)を満たす必要があるところ、Xの願書または図面からYの出願書類を作成しているから、Yは上記の要件を満たしていない可能性がある。
この場合、乙は、上記要件違反(同条4項、同条6項1号)の無効理由(37条1項4号)を主張できる。
設問(2)
1.結論
乙は、差止請求が認められないと主張することができる。
2.理由
乙は、独自に開発したhについて、Xの出願前に客観的に実施の意図が表明されていると認められる設計書の作成を行っており、その後製造販売を行っているから、即時実施の意図も認定できる。
従って、乙は、少なくともXの出願時点で日本国内で事業の準備をしていたということができるため、この事業の範囲内および考案の範囲内で通常実施権を有する(26条で準用する特許法79条)。
a1が考案の範囲に入ることはもちろん、a2も同一形状を小型化したものであるため、考案の範囲に入ると認められる。
従って、乙のa1,a2の製造販売は、乙の権原の範囲内での実施(2条3項)であるから、正当行為(19条2項)といえる。
よって上記の結論を得る。
以上
--事後感想
良くない点
・条文番号に実用新案法を付け忘れた。
・重複記載がある。
・記載方法が一貫していない。
・文言等が不正確である。
--
【問題2】
設問(1)(イ)
1. 請求項1について
(1)請求項1についての訂正は、「多面体形状玩具」を「4面体形状玩具」とするものであるから、特許請求の範囲を減縮を目的する訂正である(134条の2第1項1号)。
(2)訂正した事項は、願書に添付した明細書に記載されているから、新規事項を追加するものではない(同条5項で準用する126条3項)。
(3)また、「多面体」を「4面体」と限定する訂正であるから、特許請求の範囲記載される発明の範囲を拡張変更するものではない(同条4項)。
(4)請求項1は、無効の対象とされているものであるから、いわゆる独立特許要件は課されない(134条の2第5甲で読替えて準用する特許法126条5項)。
(5)従って、かかる訂正は訂正要件を満たす。
2.請求項2について
(1)請求項2についての訂正は、請求項1の訂正に伴い、言い換えをしたに過ぎないものであるから、不めいりょう記載の釈明(134条の2第1項3号)を目的とするものである。
(2)本訂正は、その発明実質を変更するものではないため、新規事項追加や特許請求の範囲の変更拡張には当たらない(同条5項で準用する126条3項、同条4項)。
(3)又、不明りょう記載の釈明には、独立特許要件は課されない(134条の2第5項)。
(4)従って、本訂正は訂正要件を満たす。
3.請求項3について
(1)本訂正は、「コイイルバネ」という誤記を「コイルバネ」に変更する誤記の訂正、および請求項1の訂正に伴う不明りょう記載の釈明を目的とした訂正である(134条の2第1項2号、同項3号)。
(2)本請求項は、無効審判の対象となっていないから、独立特許要件が課される(同条5項で読み替えて準用する126条5項)。訂正した請求項3については、Xに記載された発明より進歩性が欠如する可能性がある。
(3)この場合、独立特許要件を満たさないため、訂正要件を満たさない。
(4)進歩性がある場合には、新規事項追加(同条3項)や拡張変更(同条4項)にもあたらないため、訂正要件を満たす。
4.請求項4について
(1)本訂正は、請求項の削除であるから、134条の2第1項に規定されるいずれの訂正目的ともならない(同項各号)。
(2)従って訂正要件を満たさない。
設問(1)(ロ)
1.請求項1について
乙および丙は、請求の理由にYを追加する補正をしうる。訂正により補正する必要があるからである(131条の2第2項1号)。
2.請求項2および3について
乙および丙は、本審判で当該請求項を無効とする手続きはなしえない(131条の2第1項)。
ただし、請求項2および3について、別途無効審判を請求することができる(123条1項2号)。
4.請求項4について
乙および丙は、特段の手続きをする必要はない。
設問(2)
1.乙の無効審判には、なんら影響を及ぼすものではない。
2.本問では、①乙が単独で審決取り消し訴訟をなし得るか、および②一事不再理効(167条)が及ぶかが問題となる。
3.条文上、単独提起を認めない根拠はなく、また、無効審判の当否を争う権利は各人が有するものであるから、単独提起は可能である。
4.また、167条は、確定後に審決登録がなされたあとの無効審判を権利安定の観点から禁止するものであり、また、権利の有効無効を争う権利は各人が有するものであるから、丙の審決確定をもって、乙の審判請求が167条違反と解すべきではない。
以上
---事後感想
・文章がめちゃくちゃで読みづらい
・請求項の削除は特許請求の範囲の減縮にあたるらしい。(下記Q8)
訂正審判Q&A
・設問(1)(ロ)別途の無効審判請求は不要だった模様。逆に訂正が認められない旨の主張が必要だったのか。あと、請求項4についての記述は不要だった。
・設問(2)の単独提起は不要だった模様。
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この時期で、問題文を知っていてこの出来って、ダメなんじゃないだろうか。
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