「特定侵害訴訟代理業務試験」、通称「付記試験」のことについて、興味を持っている方も多かろうから概略を記載する。とはいっても、記憶に基づき記載するので誤りがあるかもしれない。もし誤りを見つけた方がいれば、ご指摘されたい。
■付記試験とは
特定侵害訴訟(弁理士法2条5項)について、弁護士と共同受任を条件に訴訟代理人となる資格を得るための試験である。とはいっても、特定侵害訴訟自体めったになく、あったとしても受任できるのは一部の限られた先生ばっかりなので、実際資格を取っても役に立たないなどと言われている。
■受験要件
受験年の1~3月くらいに弁理士を対象に募集される能力担保研修を受講すること。(弁理士試験合格後では、最短で弁理士試験合格年の翌々年に受験できる)
■難易度
昨年実績合格率
50.5%である。
半分が受かる、というと温いようにも思える。しかし、受験までに20万円~50万円くらい費用をかけているのが一般的であることに鑑みると、記念受験組は基本いないはずであるから、なかなか厳しい試験であるといえる。
■受験のための費用
話が前後したが、受験(受験勉強含む)のための費用は、20万~50万円くらいである。
基礎研修 :略10万円
能力担保試験:20万円(必修)
答案練習等のゼミ:3万円~10万円
模擬試験等 :2万円くらい/1回
■試験の内容
分野:特許 商標又は意匠又は不正競争
民法、民事訴訟法の文章問題(小問)
訴状又は答弁書の起案
■試験の時期
10月末
■各研修の内容と開催時期
基礎研修:受験前年10月~受験年3月くらいまで(土曜午前 or e-learning)
民法と民事訴訟法の基礎知識を学べる。なお、必修である能力担保研修は、基礎研修受講程度の民法、民事訴訟法の知識を有していることを想定しているようである。試験の小問対策にも必須である。
法学部卒業者とか、ロースクール修了者とか以外は受講しておくとよかろう。
能力担保研修:受験年4月末~8月半ばくらいまで(平日夜又は土曜)
最初に民事訴訟の流れの概略を学び、その後特許等、個別の分野の注意事項などを学ぶ。自宅起案が4回、他2回の宿題があり、その中で、訴状、答弁書を起案する。
自宅起案は、人によるだろうが、2週間で5~8時間くらいかけて起案しなければならず、なかなかの負担になる。なお、一度受ければ、翌年以降受講しなくてもよいというお得な研修である。
答案練習のゼミなど:(平日又は日曜)
バラバラ 受験年3月~8月開催もあれば、7月~9月開催もある。過去問を中心に答案練習をするようである。自主ゼミなどもある。一つくらいは受けておいたほうがよさそうである。
模擬試験:(日曜が多い)
受験年8~10月くらいに開催されるようである(あんまりよく調べていない)。
■勉強時間
一般的に、研修等含めて100時間が平均と言われているようである。なお、能力担保研修は合計で45時間くらいかかるようである。
■面白さ
とても面白い。また、簡単な試験ということは全くなく、やりがいも十分ある。
弁理士試験で学べなかった民法民事訴訟法を学ぶことができる。どこまで実務に役立てられるかは各人次第だが、将来的な選択肢も(少しは)広げられるだろうから、もし余裕がある人がいれば受験してみるとよかろう。